ゲーテとの対話 (上)

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        ゲーテとの対話 (上) 人間のもっているさまざまの力を同時に 育てることは、望ましいことであり、 世にもすばらしいことだ。 しかし人間は、生まれつきそうはできて いないのであって、 実は一人ひとりが自分を特殊な存在に つくりあげなければならないのだ。 byゲーテ しかし、今はもう迷う時代ではないよ、 われわれ老人の時代はそれだったん だが、それにしても、君たちのよう な若い人たちがまたしても同じ道を たどろうということになると、 いったいわれわれが求めたり迷った りしたことのすべては何の役に立った ことになるのだろう。 byゲーテ 詩はすべて機会の詩でなければいけない。 byゲーテ 現実には詩的な興味が欠けている、 などといってはいけない。 というのは、まさに詩人たるものは、 平凡な対象からも興味ぶかい側面を つかみだすくらいに豊富な精神の 活動力を発揮してこそ詩人たるの 価値があるのだから。 byゲーテ 全体のどこかうまくいかない ところがあると、個々の部分は どんなによくても、全体として は不完全なものになり、君は完璧 な仕事をしたことにならない。しかし、 ただ君の手にあうような個々の部分 だけをそれぞれ独立して表現するなら、 それはきっとよいものができる。 byゲーテ 描かれうるものは、石から人間に いたるまで、すべて普遍性を もっている。 byゲーテ 対象がだめなら、どんな才能 だって無駄さ。 近代の芸術がみな停滞して いるのも、まさに近代の芸術家に、 品位ある対象が欠けているからだよ。 byゲーテ どんな状態にも、どの瞬間にも、 無限の価値があるものだ。 なぜなら、それは一つのまったき 永遠の姿、その代表なのだからね。 byゲーテ 独創はまたとかく迷いにおちこみ やすいものだからな。 byゲーテ 一切の思考は、 思考そのもののためには何の役 にも立たないのだよ。 byゲーテ おおよそ、作家の文体というものは、 その内面を忠実に表わす。 明晰な文章を書こうと思うなら、 その前に、彼の魂の中が明晰で なければだめだし、スケールの 大きい文章を書こうとするなら、 スケールの大きい性格を持た なければならない。 byゲーテ もし自分の生まれつきの傾向を 克服しようと努めないのなら、 教養などというものは、 そもそも何のためにあると いうのかね。他人を自分に同調 させようなどと望むのは、 そもそも馬鹿げた話だよ。 byゲーテ 性に合わない人たちとつきあって こそ、うまくやって行くために 自制しなければならないし、 それを通して、われわれの心の中にある いろいろちがった側面が刺激されて、 発展し完成するのであって、やがて、 誰とぶつかってもびくとも しないようになるわけだ。 byゲーテ 人間は、たがいにぶつかりあいながら、 水に浮かんでいる壺である。 byゲーテ われわれは、朝起きたときが、 一番賢明である。が、また、 一番心配も多い。 というのは、心配はある意味では 賢明と同義だ、 それは、受け身の賢明さだろうが。 愚者は、けっして心配をしない。 byゲーテ 人は、 青春のあやまちを老年に持ち こんではならない。老年には 老年自身の欠点があるのだから。 byゲーテ 自然は、自然の道を行く。 …われわれには例外と見えるものも、 じつは法則にかなっているのだ。 byゲーテ 否定的であることは、無に通ずる。 私が悪いものを悪いといったところで、 いったい何が得られるだろう? だが良いものを悪いといったら、 ことは大きくなる。 byゲーテ 不幸なのは、 国家の場合では、 誰一人として生活をたのしもうと する者もなく、みんながよって たかって支配したがることであり、 芸術の場合では、 みんながみんな創造されたもの を享受しようとはせず、 自分の手でまた創造しようと することである。 byゲーテ 人間というものは、 この世のさまざまな問題を 解いてみせるために 生まれてきたわけではない。 問題の発端がどこにひそんで いるのかを探りだし、それから 先は理解できる範囲内に自分を とどめておくべきなのだ。 byゲーテ 主観的な性質の人は、 わずかばかりの内面をすぐに 吐き出してしまって、結局マン ネリズムにおちいって自滅してしまう。 byゲーテ 後退と解体の過程にある時代という ものはすべていつも主観的なものだ。 逆に、前進しつつある時代はつねに 客観的な方向を目指している。 byゲーテ 有意義な努力というものは、 すべて偉大な時期ならどの時期 にも見られるように、 内面から出発して世界へ向かう。 そういう時代は、現実に努力と 前進を続けて、すべて客観的な 性格をそなえていたのだよ。 byゲーテ われわれの外にあるもので、 同時にわれわれの中にない ようなものはないのだ。 byゲーテ もし世界というものが、 これほど単純でなかったら、 いつまでも存在することは 不可能だろうね。 byゲーテ 【ゲーテとの対話 上】より
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