夜と霧

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        夜と霧

        “生きていることにもうなんの期待

        がもてない”

        こんな言葉にたいして、

        いったいどう応えたらいいのだろう。

        ここで必要なのは、

        生きる意味についての問いを180度

        方向転換することだ。





        “わたしたちが生きることから何

        を期待するか”

        ではなく、むしろひたすら、

        “生きることがわたしたちから

        何を期待しているのかが問題なのだ”

        ということを学び、

        絶望している人間に伝えねばならない。





        わたしは生まれてはじめて、

        たちどころに理解した。

        天使は永久の栄光をかぎりない

        愛のまなざしにとらえられてい

        るがゆえに至福である、

        という言葉の意味を・・・。





        生きるとはつまり、

        生きることの問いに正しく

        答える義務、生きることが

        各人に課す課題を果たす義務、

        時々刻々の要請を充たす義務

        を引き受けることにほかならない。





        自分を待っている仕事や愛する

        人間にたいする責任を自覚した

        人間は、生きることから降りら

        れない。まさに、自分が“なぜ”

        存在するかを知っているので、

        ほとんどあらゆる“どのように”

        にも耐えられるのだ。





        わたしたちがなしたことも、

        わたしたちが苦しんだことも、

        すべてはいつでも現実のなか

        へと救いあげられている。

        それらもいつかは過去のもの

        になるのだが、まさに過去の

        なかで、永遠に保存されるのだ。





        人間とは、人間とはなにかを

        つねに決定する存在だ。





        人間とは、ガス室を発明した存在だ。

        しかし同時に、

        ガス室に入っても毅然として

        祈りのことばを口にする存在でもあるのだ。



        V・E・フランクル【夜と霧 新版】より








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